研究概要 |
臭化テトラアルキルアンモニウム(R_4NBr,R=Me,Et,n-Pr,n-Bu)塩および臭化アルカリ(LiBr,NaPr,KBr,CrBr)塩水溶液中の重水分子のDおよび70核のスピン一格子緩和時間(T_1)を1mcl/kg以下の低濃度領域で、臭化テトラアルキルアンモニウム水溶液については5℃から25℃まで、臭化アルカリ水溶液については5℃から50℃の温度範囲で温度効果の実験を行なった。また、圧力効果については、ポリマー性の高圧NMRセルを用いて室温、500気圧の圧力範囲で、水のスピン一格子緩和時間の測定を行ない、500気圧の圧力範囲でのNMR測定に関する性能をテストした。温度効果の実験では、臭化テトラアルキルアンモニウム水溶液の重水分子のD核および1又0核のR_1/R^0_1(R_1=1/T_1,R^0_1:純 水)の濃度効果は、低温においてR_1/R^0_1=1+Bm+Cm^2(mは重量モル濃度、B,Cは定数)で記述され、低温ほどまたアルキル鎖長が長くなるほど、B,Cの値は大きくなった。このことは、テトラアルキルアンモニウムイオンの周りの疎水水和構造が、低温、長いアルキル鎖長ほど発達してイオンの周りの水和殼同士が互いに重なり合うためと考えられる。次にこれらの実験結果を水分子を間にはさんだ疎水水和モデル(SSHY)に適用し、疎水基周りの水和水の効的構造を明らかにした。その結果、疎水水和の重なりによって生じる水和水の運動は疎水基の周りの水に比べて運動は激しく、かつ回転運動に異方性(n-Bu^+イオン)が生じることが明らかとなった。一方臭化アルカリ水溶液の重水のD核および1又0核のスピン一格子緩和時間の濃度効果は、広い温度範囲にわたってR_1/R^0_1=Bmで記述される直線関係を満足した。また、B値への温度効果は、温度の上昇とともに大きくなる。このことは、氷の構造性に対する温度効果として、高温ほど構造形成効果が大きく、低温ほど構造破壊の傾向が弱まることを示している。
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