研究概要 |
従来の周波数領域ハイパ-ラマン分光法に対し時間領域フ-リエ変換型ハイパ-ラマン分光法を開発するため,まず5次光学過程の検出を試みる前に少なくとも3次光学過程が十分な感度で検出されねばならいので,本課題の原理となっている「インパルス誘導ラマン法」の測定装置を組むことから始めた。光源には新規に導入したパルス幅200フェムト秒のチタン:サファイアレ-ザ-を用いた。試料に多重量子井戸の半導体GaAl/gaAsの薄膜を用い,まず励起密度が高次非線形過程を検出するのに十分か否かを確かめた。試料は超短パルス光励起によってキャリヤ-が生成され,30ピコ秒のキャリヤ-スピン緩和が偏光ポンプープロ-ブ法によって既に試料提供者によって知られているので,測定の光学系を偏光ポンプープロ-ブ法とインパルス誘導ラマン法にできるだけ共通になるように配慮し,追試ができるようにした。しかし信号は検出されなかった。調査の結果,光源の強度は十分であるが,位相検波等の測定条件が不備であることが判り,試料としてより単純な系から始めて検出感度を十分に改良した後再度行うことにした。また光源の特性の十分把握しておくために試料にナトリウム蒸気を選び2光子共鳴(3S→4S)による強度自己祖関の測定を行った(関連論文番号1,3)。その結果光源のパルス幅は通常の高調波発生法による結果と完全に一致し,原子の鋭い線スペクトルにも拘らず入射光の極めて広いバンド幅のパルスが忠実に測定できることが示された。信号はかなり弱いが,位相検波等の検出条件を改善することによって十分な精度が得られたので,最初の試料に戻りまず偏光ポンプープロ-ブ法を,次いで4光波混合法としてインパルス誘導ラマン法によるキャリヤ-スピンの緩和を観測する目途が立った。本課題の報告時点では目標を達成していないので引続き装置の改良を行い,5次光学過程の測定を早急に試みる予定である。
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