研究概要 |
我々はこれまでに有機強磁性体、有機フェリ磁性体のモデルとなる様々な高スピン有機分子を設計し、それらの電子状態ならびにスピン整列機構を主として磁気共鳴法を用いて明らかにしてきた。本研究では、これまでのものとは異なる新しい分子間スピン整列機構の可能性を調べるために励起状態を介したスピン整列の可能性を検討した。まず、分子性の励起子の電子状態を詳細に研究するための手段として光検出磁気共鳴法があげられるが、既存のESR分光器に光電子増倍管、フォトン計数ユニットおよび計上備品等を組み合わせた光検出磁気共鳴測定システムを構成した。本システムは、ヘリウム移送型温度可変装置とも組み合わせてあり、約1.5K〜300Kの任意の温度で実験が行なえるようにした。フォトリン計数システム等の独自の装置チェックは終了した。現在、ESR分光器ならびに温度可変装置と組み合わせた全系の装置チェックを帯溶隔核で高純度に精製したベンゾフェノンにド-プしたベンジル分子を標準試料として用いて行っている段階である。現在フォトン計数システムの所のD/A変換器の応答測定が問題となっており、変調方式を磁場変調からビンモジュレ-ダによるマイクロ波の振幅変調に切りかえ、変調測定を任意に可変し、遅くすることによりこの問題を解決する方向に向っている。励起子移動によるスピン整列系のモデルとして、現在1,3,5ートリブロとベンゼンおよび1,2,4,5ーテトラクロロベンゼンをホスト分子とし、2,2,6,6ーテトラメチルピベリジンーNーオキシラジカル等をゲストとしてド-プした系の単結晶を育成中である。またこれ以外の系として、分子内での励起子移動が可能な系も現在あわせて検討中である。今後、当初予定したが現在まだ実施できていない実験もあわせて研究を進行していく計画である。
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