研究概要 |
これまではシクロオクタ-1,3ージエンと一般的なジエノフィルのディ-ルス・アルダ-反応は〔4+2〕付加体を与えないことが報告されていた。このような、起こりにくいディ-ルス・アルダ-反応を加速する手法として、これまで反応系に高圧を印加する、あるいはルイス酸触媒を用いる等が開発されてきたが、シクロオクタジエンの場合はいずれの手法も十分ではない。我々は既にシス,トランスーシクロドデカー1,3ージエンと無水マレイン酸のディ-ルス・アルダ-反応でヒドロキノンを共存させると〔4+2〕付加体の収率が大きく向上することを見いだし報告した。本研究は、この結果をシ株ロオクタ-1,3ージエンに応用したものである。 シクロオクタ-1,3ージエンと無水マレイン酸の混合物にヒドロキノンを加え窒素雰囲気下、200℃に加熱して得られる褐色の樹脂状物質を粉砕して溶媒で20時間の連続抽出を行なった。抽出物をカラムクロマト法により精製して8%の収率で〔4+2〕環化付加体を得た。この反応ではジエンと無水マレイン酸が共重合体を生成することが知られている。本研究で用いたヒドロキノンは、この共重合の速度を抑える重合防止剤としてはたらき、〔4+2〕環化付加体の生成が初めて認められたと考える。この反応を高圧下(1000気圧)で行ってみたところ、高圧による収率向上は認められなかった。さらに、これまでに全く報告例のないシクロノナ-1,3ージエンと無水マレイン酸の重合防止剤共存条件下でのディ-ルス・アルダ-反応を試みたところ、収率5%で付加体を得た。以上の結果から、重合防止剤共存下でのディ-ルス・アルダ-反応は、これまで全く〔4+2〕環化付加体を与えないと考えられていた中員環ジエン類から目的生成物を得る有効な手段であることがわかった。
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