研究概要 |
ベンゼノイド化合物への炭素側鎖の導入法として有用なFriedel-Crafts型反応は、トロポロン類では金属触媒との錯形成のため起こらない。この合成的欠点を解決するため、新しい反応基質としてN,N'-ジアルキルおよびN.N'-ジアリール-2-アミノトロポンイミン類をとりあげ、その合成と反応について検討した。 1.2-アミノトロポンイミン類の合成:2-アミノトロポンイミン類の新しい合成基質としてシクロヘプタ[b]ベンゾオキサジンを選び、脂肪族アミンを作用させN,N'-ジアルキル-2-アミノトロポンイミン類(7種)を得たが、ジアリール置換体を得ることはできなかった。そこでもひとつの合成素子として1,7,7-トリクロロトロピリデンを選び、芳香族アミンすなわちアニリン類を作用させN,N'-ジアリール-2-アミノトロポンイミン類(5種)を合成することができた。またトリクロロトロピリデンから1,2-ジクロロトロピリウムを新たを誘導でき、不安定なトリクロロピリデンの合成等価体として利用できることが明らかになった。 2.2-アミノトロポンイミン類の反応:N,N'-ジアルキル-2-アミノトロポイミン類は臭素化およびニトロ化の主生成物として5-モノ置換体を与えるが、本研究の目的とするFriedel-Crafts型反応はトロポロン類と同様に錯形成により起こらなかった。環状類縁体である2,3-ジヒドロ-1H-シクロヘプタ[b]ピラジンのアシル化を行うと、七員環炭素子上では起こらず窒素原子上で起こりさらにピラジン環加水分解生成物が単離された。そこで5-ブロモ-2-アミノトロポン類とプチルリチウム存在下で蟻酸メチルあるいは酢酸エチルを作用させたところ、それぞれ5位にホルミノ基あるいはアセチル基が導入された2-アミノトロポンイミン類を得ることができた。また、その加水分解により5-アセチルトロポロンが得られた。
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