研究概要 |
日本海の日本海盆北部から採集されたピストンコア試料(KH77-3-L4′)の高硫黄含有量層から野イチゴ状黄鉄鉱を抽出・単離し,その硫黄安定同位体比を測定した。その結果,-50‰にも達する極めて低い値を示し,この黄鉄鉱が硫化水素を含む底層水下で初生的に沈積したものであることを示し,野イチゴ状黄鉄鉱の硫黄同位体比が,硫化水素を含む底層水下で初生的に沈積したものかあるいは結成過程での硫酸還元により生成したものかを分別するのに極めて有力な指標であることを見出した。加速器質量分析法により、このコアの有機態炭素のC-14年代を求めた。このコアの有機態炭素,窒素,全硫黄および中性子放射化分析による27主・微量元素の詳細な鉛直分布を求めた。その結果,元素の酸化還元条件下での挙動のちがいを基に、過去35000年間の日本海底層水の酸化還元条件の変遷を推定した。この地点の近くで採集された深海掘削コアLegイ27site795コアから分取した123試料について同様に、有機態炭素,窒素,全硫黄および中性子放射化分析による27主・微量元素組成を求めた。また、高硫黄含有量層から野イチゴ状黄鉄鉱を抽出・単離し,その硫黄同位体比を求めた。14′コアでの結果をもとに約1500万年前の日本海の誕生以来の日本海底層の酸化還元条件の変化を推定した。その結果約240万年以後になって酸化的環境と還元的環境との間の顕著な周期的変動が明らかになった。
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