研究概要 |
科学や科学技術が自然環境の保全ならびに生命の安全性の確保と調和を保ちつつ高度に発展していくためには,今後,トレースキャラクタリゼーションの研究がますます重要となり,そのためには,高感度,高選択的で時間分解能に優れた物質認識法の開発が急務であるとの考えから,高速掃引微分パルスボルタンメトリー(FSDPV)法の開発と,その分析化学的展開について研究してきた。 まず,高速クロノアンペロメトリー測定装置を試作して,マイクロ電極での容量性電流の時間応答特性を測定,解析した結果,代表者が開発した内部シールド型マイクロ電極では,10マイクロ秒以内に容量性電流が減衰することがわかった。その結果に基づいて,マイクロ秒領域の電圧パルスを三角波掃引電圧に重畳かるための高速パルスユニットを設計,平成3年度に導入し,FSDPV装置を完成させた。本装置は,クロノアンペロメトリー,DC,サンプルドDC,ノルマルパルス及び微分パルスボルタンメトリーの各モードでの高速測定ができる上に,ストリッピング法の併用も可能な,多機能高速電子化学測定システムである 次に,本測定装置に用いて,パルス電解時間やパルス待つ時間を変化させた場合のFSDPVについての基礎検討を行い,理論式による計算やデジタルシミュレーション結果との考察から,測定システムの評価を行った。その結果,50μm径のマイクロ電極では20μ秒のパルス印加が可能であること,さらに,本法により標準酸化環元電位の測定が高精度で行えることを明らかにした。本法の時間分解検出器としての応用については,FSDPVがミリ秒領域での時間分解能を有していることは実証されたが,市販デジタイザーでは1本のボルタモグラムしか記憶できないので,現在,512本のボルタモグラムを記憶できるデジタイザーを開発中であり,今後,発展させていきたいと考える。
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