研究概要 |
ポリチオン酸イオン(SxO_6^<2->:X=3,4,5,6)は,一般にS^<2->,SO_3^<2->,S_2O_3^<2->と共存することが知られており,また,S^<2->とSO_3^<2->の反応によって生成される化合物である。本研究では,S^<2->-SO_3^<2->-S_2O_3^<2->-S_3O_6^<2->-S_4O_6^<2->の5種硫黄化学種混合物の分析法を確立することを目的とした。S^<2->,SO_3^<2->およびS_2O_3^<2->の3種化学種は化学的性質が類似しているため,従来の分析法ではその化学的性質の類似性が混合物の分析に利用された。そのため,分析条件が厳しくなり,分析誤差も大きく見積られてしまうという欠点があった。本研究ではS^<2->-SO_3^<2->-S_2O_3^<2->の混合物を完全に分離し,各成分を直接的に定量できる条件を確立した。操作IのS^<2->の定量では、混合液に一定量の塩酸を加え,窒素ガスをバブリングしてS^<2->をH_2Sとして分離し,これをCN^-とI_2の混合液に吸収して生成したSCN^-を測定する。操作IIのSO_3^<2->の定量では,混合溶液に緩衝剤とHgCl_2を加え,さらに塩酸を加えてから窒素ガスをバブリングしてSO_3^<2->をSO_2として選択的に分離する。このSO_2を硫黄エタノール溶液に吸収して生成するS_2O_3^<2->を測定するか,またはI_3^-溶液に吸収して過剰のI_3^-を測定する。操作IIIのS_2O_3^<2->の定量では,混合溶液に緩衝剤,酢酸亜鉛,さらに塩酸を加え,窒素ガスをバブリングしてS^<2->とSO_3^<2->を完全に除去してからS_2O_3^<2->を測定する。S_3O_6^<2->とS_4O_6^<2->共存下のS_2O_3^<2->を本操作によって選択的に定量することができる。操作IVのS_2O_3^<2->とS_4O_6^<2->の合量の測定では,操作IIIに従ってS^<2->とSO_3^<2->を除去したのち,S_4O_6^<2->を亜硫酸塩分解して生成するS_2O_3^<2->と混合溶液中のS_2O_3^<2->と合量を測定する。操作VのS_2O_3^<2->,S_3O_6^<2->およびS_4O_6^<2->の合量の測定では,S^<2->とSO_3^<2->を除去したのち,強酸性溶液中でヨウ素酸塩を用いこれら3者をそれぞれSO_4^<2->にまで酸化し,過剰のIO_3^-からのヨウ素を測定する。本法を温泉水や湖水に応用したところ,96〜104%回収率で各成分を満足に定量することができた。
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