研究概要 |
ルイス塩基としての強さの異なる二種類の中性抽出剤,トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)とりん酸トリブチル(TBP)によるランタノイド(III)の抽出を対イオンの種類をかえて詳細に測定し,対イオンがClo_<4ー>のように不活性な場合,塩基性の強いTOPOでは重希土に向かうほど抽出がよく,塩基性の弱いTBPでは逆に軽希土の方が抽出がよいことを見つけた.また,対イオンをClO_<4ー>として同様の実験を温度を変えて行って求めた抽出定数と温度の関係から,抽出時のエンタルピ-変化とエントロピ-変化を算出した.そしてエンタルピ-変化のランタノイド(III)間のちがいはTBPによる抽出でもTOPOによる抽出でもあまり大きな差はないが,エントロピ-変数は重希土になるほど大きくなり,かつその増加の割合はTBPによる抽出に比べTOPOによる場合はずっと大きいことを指摘した.そして,このエントロピ-変化の寄与が大きいことが,TOPOによる抽出が重希土ほどよいことの一因であることを示唆した.さらにSCN^ーやNO_<3ー>の場合,抽出のされやすさの順序が必ずしも一方向性を示さないがこれはランタノイドイオンに配位する中性抽出剤の数が異なることによることを指摘した.(この研究は国際溶媒抽出会議で発表する予定) また,一連のランタノイド(III)の2ーテノイルトリフロロアセトン(TTA)と2ージフェニルヒドロキシ酢酸(慣用名 ベンジル酸)等いくつかのカルボン酸によるクロロホルムへの抽出を測定し,関連する化学種のマスバランスからランタノイド(III)ーTTAキレ-トの作る付加錯体の生成定数を決定した.さらに,水容液中でのカルボン酸錯体生成時のエンタルピ-変化を等温型量計で測定した.これらの結果に基づいてランタノイド(III)配位数や電荷密度のちがいの,錯形成におよぼす効果,並びに,イオンサイズと錯形成剤の構造に関して考察した.
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