研究概要 |
ブロモフェノ-ルブル-(BPB),ブロモクレゾ-ルグリ-ン(BCG),テトラブロモフェノ-ルフタレインエチルステル(TBPE)などのトリフェニルメタン系陰イオン染料は第四級アンモニウムイオン(R_4N^+)又はアミン(R_3N)とイオン会合する。この会合がフェノ-ル基のOHに依存すると,アミンとのみ電荷移動錯体を形成する。R_4N^+とは1:1の単純イオン会合体を形成するが,これは電荷移動錯体ではない。前者は,1,2ーDCEやCHCl_3中において完全会合し,後者は解離状態にある。電荷移動錯体形成はアミノの塩基性度にその結合が依存することを見い出した。従ってアミンの構造により解離エネルギ-が異ることを利用すれば,サ-モクロミズムによる分子識別が可能となる。又,R_4N^+は解離しているので熱の影響は現れない。このことからイオンの識別が可能となる。この原理を利用することにより,まずR_3N^+の識別が可能であり,エネルギ-差を利用すればR_3N間の識別もできる。この化学反応を分離分析技術として導入したところ,別添のAnal,Chim,Acta 255,135(1991),Anal,Sci,7,297(1991),Analyst(in press)に見られる結果が得られた。例えば生体関連物質として注目されいるアセチルコリンとコリンを10^<ー6>Mオ-ダ-で検出でき,しかも他の生体アミンの影響を受けない。又殺菌消毒薬として最近幅広く利用されているセチルピリジニウムクロライドもアミノ共存下においても分別分析が可能となった。この反応でのサ-モクロミズムは温度が25〜40℃と低いことから,装置としては簡便なものでよい。報告者らは温度調節機能を持ったフロ-セルを考案した。このセルの容量は8μlであり,材質をアルミニウムブロックとしていることから,温度変化に伴う熱伝導性に優れ,温度を変数とする分析化学的技法に十分に耐え得るものである。
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