研究概要 |
1.(1)高分子化可能なビニルベンジルオキシ基を導入したsalen型シッフ塩基配位子を,2,4ーdihydroxysalicylalde hyde,pーCMS,及びエチレンジアミンから合成し,スチレン(ST)とジビニルベンセン(DVB)との共重合体(A),アクリルアミド(AM)とDVBとの共重合体(B),及びAMとMDAAとの共重合体(C)を合成した。(2)単量体レベルでの検討の結果,反応性・選択性ともCo^<3+><Ni^<2+><Mの^<3+>であったので,上記高分子A,B,CにMn^<3+>を導入し,組成とMn含有量を元素分析により決定した。また,反射スペクトルからMn^<3+>錯体を同定した。 2.(1)上記高分子Mn錯体を固体触媒とするシクロヘキセンの酸素化を行い,酸素化率と選択率をガスクロ法により求めた。その結果,(2)過酸化水素を酸素源とする水ーアセトニトリル混合溶媒中での反応性(酸素化率)は,C(18%)<B(23%)<A(100%)であり,Bの場合は単量体の酸素化率23%と同程度であるが,Cの場合は大きく上回っており,高分子化によって触媒の長寿命化が計れることが判明した。エポキシドの選択性はC(49%)<A,B(70%)であった。ただし,固体触媒化により反応速度は遅くなった。(3)ヨウドシルベンゼンを酸素源とするANー水中でのCの反応性は100%であり,繰り返し使用も可能で,エポキシ選択性も88%と高く,かつ,反応も速かった。この他,種々の検討結果から,(4)触媒の寿命については,Mn^<3+>の含有率の他に,高分子部の親水性・疎水性に伴う膨潤性及び疎水性基質の濃縮効果が重要な役割を果たすことが見いだされた。(5)選択性に関しては,親水性ポリマ-の方が高いことが判ったが,これは,錯体部への親水性溶媒の溶媒和と関係があることが推定された。(6)本系の高分子錯体触媒の反応速度については,酸素化剤と基質の両者に対し親和性がある場合に速いことが示唆された。
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