研究概要 |
アスコルビン酸酸化酵素とフェロシアン化カリウムの反応を電子およびESRスペクトルで追跡した。フェロシアン化カリウムから供給された電子はアスコルビン酸酸化酵素のタイプ1銅部位からタンパク内に入り、ここからタンパク内電子移動により、タイプ2,3銅によって形成されるクラスタ-にプ-ルされることがわかった。この際、過剰のフェロシアン化カリウムが存在するとまずタイプ2銅とCN^-を橋かけとして結合し、タイプ2銅を選択的にひきぬくことがわかった。次いで、さらに別のフェロシアン化イオンがタイプ3銅とCN^-を橋かけとして結合し、複核スピ-シ-ズが出来た。このスピ-シ-ズは前例のない異常なESRシグナルを与えることがわかった。すなわち、異方性はあるが(g11=2.28,g⊥=2.08)、超微細分裂を示さず、しかも4Kにおいて200mWのマイクロ波によってもほとんど飽和しなかった。これは不対電子が非局在化しているためであり、電子は銅よりはむしろ鉄上にあるものと予想された。同様の実験をタイプ2銅を選択的に除去した誘導体で行なったところ、タイプ2銅が還元状態では問題のESRシグナルが現われないが、タイプ3銅が酸化状態のときには問題のESRシグナルが出現することがわかった。このような挙動は別のマルチ銅酸化酵素であるラッカ-ゼにおいても観測することができた。このような結果をふまえて、タイプ2銅とタイプ3銅が近接して、酸素の4電子還元にあたることが示された。
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