研究概要 |
〔Ru(bpy)_2〔4、4′ーbpy〔COーcys{Ag_3(CF_3CO_2)_2〕Cl_2を合成し、Ru^<II>の励起によって消光する速度を調べた。この速度は励起波長依存性を示し、アミド結合がビピルジル環と共役して励起電子がアミド結合部分に局在化しているために長枝長励起で速団が早くなる。この成果をさらに発展させるために、このアミド結合とNH…S水素結合を作る複塩を合成した。{Ru^<II>(bpy)_2〔4,4′ーbpy〔COーValーOMe)_2〕}^<2+>の錯体を合成し、現在精製中である。また〔Fe^<II>(SPh)_4〕^<2->との複塩の合成も試みている。これらは分子間NH…S水素結合形成を目指したものであり、固体中で形成しているため固体物性測定可能な形態に調製する計画である。 一方分子内水素結合の研究を新規配位子oーCH_3CONHC_6H_4SHを合成して、錯体合成し、NH…S結合の存在を確認した。錯体は[Mo^VO(L)_4]^-〔Mo^<IV>O(L)_4]^<2->,〔Fe^<II>(L)_4〕^<2->,〔Co^<II>(L)_4〕^<2->などを合成し、結晶構造解析を行った。その結果NHはS原子のPπ軌道上にあり、MーS結合を強める様に働いている。またこれによって酸化環元電位は正方向へシフトし、電子伝達作用に直接影響を与えている。また比較錯体として〔M^<II>(PーCH_3CONHC_6H_4〕^<2->,〔M^<II>(OーCH_3C_6H_4S)_4〕^<2->錯体を合成し,NH…S水素結合形成の上記錯体の ^1HーNMRスペクトルでisotropicなコンタクトシフトを調べた。その結果、PーCH_3CONHのアミドプロトンは正にもかかわらずOーCH_3CONHでは負に現れ、また同じ位置にあるOーCH_3のプロトンも正に観測される。従ってOーCH_3CONHは明らかにNH…S水素結合を介したフェルミコンタクトを示す。 今後、NH…S水素結合のさらに一方のC=Oに次のアミドが水素結合したネットワ-クを持つ錯体を合成し、上記のRu^<II>と結合した異種多核錯体の電子移動あるいはエネルギ-移動の可能性を調べる予定である。
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