研究概要 |
四座配位子としてジアミノジカルボン酸[^-OCOCH_2CH_2NR(CH_2)nNRCH_2CH_2COO^-:eddp(R=H,n=2);tndp(R=H,n=3);Me_2eddp(R=CH_3,n=2)]と二座配位子としてエチレンジアミン[NH_2CH_2CH_2NH_2(en)]を含むコバルト(III)錯体(α,β-1及びβ-2[Co(eddp)(en)X,β-[Co(tndp)(en)]X,α-[Co(Me_2eddp)(en)]X)を新規に合成、光学分割し、それらの幾何構造、絶対配置を吸収、CD、C-13NMRスペクトルデータ及びX線結晶構造解析により決定した。さらに、構造決定したこれら錯体のラセミ体及び光学活性体について、水溶液中室温に近い温度で光照射を行って、水溶液中で安定なCo-C結合錯体をいくつか単離することに成功した。 結晶として単離したすべての光反応生成錯体は、C-13NMRスペクトルにおいて-5ppm付近の高磁場側にコバルトに直接結合した炭素(Co-CH_2-)に帰属される特徴的なレゾナンスピークを示した。光学活性なCo-C結合錯体の幾何構造、絶対配置を吸収、CD、C-13NMRスペクトルデータ及びX線結晶構造解析によって明らかにした。また、これらの結果に基づいて光反応機構を考察した。[Co(eddp)(en)]Xの光反応では、光学活性なΛ-α体、Λ-β-1体及びΛ-β-2体からそれぞれ光学活性なΛ-α体、Δ-α体、Λ(又はΔ)-β体のCo-C結合錯体が、Δ-β-[Co(tndp)(en)]X及びΛ-α-[Co(Me_2eddp)(en)]Xの光反応からはそれぞれΛ(又はΔ)-β体及びΛ-α体のCo-C結合錯体が立体選択的に生成した。Δ-β-[Co(eddp)(phen)]Xからも光学活性保持で光反応が進行した。これらのCo-C結合錯体はすべて、原料錯体の2つのカルボキシル基の一方でのみ光脱炭酸反応を起こして生成した。
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