研究概要 |
〔Ru(bpy)_2L_2〕^<2+>錯体の光配位子置換反応について、以下のことが明かになった。 1.L=置換ピリジン(Xpy;X=H、3ーCH_3、4ーCH_3、3,4ー(CH_3)_2、3,5ー(CH_3)_2)の錯体:(1)反応の量子収率は[Cl^-]に依らなかった。反応は解離機構で進んでいると結論される。(2)Xpyの種類の違いによってpKa(σ反結合性の尺度)は5.2ー6.6まで変化するが、φはあまり変化しなかった。(3)Xpy系ではφが[H^+]を依存性を示した。反応の活性化状態として、RuーN(py)軸から配位py平面が傾く変位をしたpyのNにH^+が付加することによりRuーN結合の切断が促進されると考えられる。このH^+付加の平衡定数とXpyのpKaとの間には良い相関が見られた。 2.L=NH_3、en/2(エチレンジアミン)の錯体:(1)L=NH_3ではφは水中(φ=0.0083)、NaCl中、HCl中でほぼ同一であり反応は解離機構で進むと結論された。(2)NH_3系のφはpy系よりも1桁小さい。両者におけるσ反結合性の大きさの違い(従って ^3dーdenergy levelの高低)に由来している。(3)L=en/2では一つ目のRuーN(en)結合切断のφはNH_3の場合より2桁小さい。これはσ反結合性の違い、キレ-ションの効果を反映していると思われる。 3.L=pyNH_2/2(2ーピコリルアミン)錯体:この錯体の量子収率φは中性溶液中で3.3X10^<-3>、0.01ー0.5M HCl中で、(7.1-7.8)X10^<-3>であった。酸性溶液中のφ値は、RuーN(py)結合の切断のφに等しいと考えられるが、この値はXpy錯体のφより1桁小さい。これはσ反結合性の違い、キレ-ション、の効果であると考えられる。 4.L=dmbpy/2(3,3'ージメチルー2,2'ービピリジン),bpy/2の錯体:dmbpy錯体のφの1/50であるが、この違いはキレ-ションの効果に、bpy錯体のφはpy錯体のφはpy錯体のφの1/50であるが、これはキレ-ションの効果、及びπ結合性の違いに基づいていると考えられる。
|