研究課題/領域番号 |
03640537
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
遺伝学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 健一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (30150056)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1993年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1992年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1991年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | 遺伝子・文化の共進化 / 成人乳糖分解 / 手話 / 文化伝達の起源 / 文化伝達 / 父親による子育て / 共進化 / 父性信頼度 / 聾 / 劣性遺伝 / 同類結婚 / 飲乳 |
研究概要 |
遺伝子と文化の共進化の事例研究を3つ行った。1.成人乳糖分解者が多い人類集団で家畜の乳を飲む習慣が普及していることを説明するため、3つの仮説が提唱されている。乳糖分解者と飲乳者の共進化を集団遺伝学のモデルに基づいて理論的に研究し、それぞれの仮説の妥当性を検討した。まず、文化歴史的仮説あるいはカルシウム吸収仮説が成り立つためには、従来言われているよりはるかに強い自然淘汰が要求されることを示した。また、乳に対する好みの効果を検討し、逆原因仮説が成り立つためには乳糖分解者と分解不良者の間で好みに違いがあることが必要で、しかも文化伝達係数がある不等式を満足しなければならないことを示した。逆に、好みの違いが大きすぎると、前者2仮説が成り立ちにくいことも分かった。2.手話とは聾者の自然言語であり、文化伝達によって維持されている。一方、重度の幼児期失聴の約1/2が遺伝性であり、その約2/3が複数の単純劣性遺伝子によって引き起こされている。劣性遺伝の特徴として聾者が世代を隔てて出現する傾向にあるため、親から子への手話の伝達が阻害される。遺伝子と文化の相互作用の観点からこの問題を解析し、劣性遺伝子が2つ存在する場合、手話が失われないためには聾者同士の同類結婚が重要であることを示した。実際、日本や欧米で約90%の同類結婚率が報告されており、手話という特殊な文化現象の存続が聾に関する同類結婚によって可能になっていることが暗示された。さらに、聾学校などで家族以外の者から手話を学習する機会がある場合について検討を加えた。3.文化伝達能力と父親による子育てが共進化する可能性を理論的に検討した。有性一倍体モデルを完全に記述し、平衡点の同定と安定性解析を行った。その結果、母親からの文化伝達の効率がよく、父親からの文化伝達に補助的な意義しかない場合、文化伝達能力と父親による子育てがほぼ独立に進化することが分かった。一方、父親からの文化伝達が特に重要である場合には強い相互作用が見られ、文化伝達能力と父親による子育ての共進化が促進される。また、より現実的な二倍体モデルを部分的に解析したが、本質的な結果において一倍体モデルと一致した。さらに、父性信頼度の低下による効果も検討した。
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