研究概要 |
主要組織適合抗原系(MHC)は臓器移植の際に極めて重要な遺伝子群である。 これは従来から移植の臨床で免疫学的方法によって,ドナーとレシピエントのタイピングを行い,そのMHC型(ヒトではHLA型)が合うか否かを判定する事でよく知られている。 さらにMHCは免疫担当細胞が自己と非自己の識別をする際に,自己マーカーの役割を担っていることが判明している。一方,MHCは一つの遺伝子座あたり30個以上もの遺伝的多型が存在し,ヒト集団内での遺伝的多様性が異常に高い。 この多型は従来は免疫血清学的に同定され,通称HLA型(白血球抗原型)とされたもので,同定するための血清は輸血経験者,妊婦の血清から分離されており,良質の血清を得ることは極めて困難な作業であった。この数年間のこのMHC型が遺伝子DNAの塩基一次配列の相違として報告され,この遺伝子内に多数の点突然変異が存在する事が判明した。 研究代表者らはこのMHC遺伝子のDNA上の配列差違をPCR法を応用することにより移植患者(レシピエント)と臓器提供者(ドナー)のHLA型が合致するか否かの判定法を開発した。PCRで増巾したHLA-クラスII型遺伝子DPおよびDOについてSinale Strand Conformation Polymorphismをゲル電気泳動によって検出するものである。 その結果を従来の血清学的手法と比較し,充分DNA分析によって ドナーとレシピエントのマッチングの判定が可能であることを示した。またこの方法はヒト集団中のHLA多型を判定する強力な方法であり,従来血清学的方法で判定不能であった新しい型の同定にも利用できることが判明した。
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