研究概要 |
ヨモギハムシ種群の染色体数の異なる種群の種間社会を解析するため染色体調査によるこれら個体群のマクロな分布調査を行なうとともに,成虫の日周活動調査や繁殖期の染色体数の異なる個体群の個体間関係の解析を行なった。 マクロな分布の補足調査では北海道には全て染色体数の多い個体群だけが分布した。東北,関東,東海地方の補足調査では,ドウガネ型の頻度の高い個体群においても,平野部の個体群は,下北半島のものを除きすべて染色体数の少ない種であった。山岳域では染色体数の多い種が生息していた。 染色体数の異なる種群の日周活動調査の結果,繁殖期には両者で大きな違いは認められなかったが,非繁殖期には,染色体数の多い種は植物体上に滞在する個体が多かったのに対し,染色体数の少ない種では地上部に降りている個体の割合が大きかった。このような行動差が後述の違いと伴なって,両者が側所的分布をする結果になっているのかも知れないと推察された。 染色体数の異なるヨモギハムシ種群の染色体数の多い種と少ない種の混合個体群を作り野外に放虫し,それらの間の相互作用を観察した。この際放虫密度を大きく異なる3つの条件に分け,それらの違いとの関係に注目して行動観察を行なった。その結果,生息密度を10頭/m^2と高くした場合には,染色体数の異なる種での交雑率に20〜30%と非常に高かった。これに対し,5頭/m^2程度に放虫した場合には交雑率はかなり低下し,10%前後であった。また,さらに低い1頭/m^2前後の場合には合計64頭の交尾が観察されたが,全く交雑している個体はみられなかった。その他染色体によって好む環境に若干違いがあるようであった。以上のように密度や環境の違いによって相互作用の在り方が変化していた。
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