研究概要 |
1)多くのC_4植物の無傷葉緑体によるピルビン酸輸送活性の性質を検討した(発表論分1,および発表予定)。a)C_4植物の葉肉細胞葉緑体は、光依存性のピルビン酸能動輸送を有する。光の代わりとして、Na^+濃度の上昇(Na^+-ジャンプ)が有効な種(Na^+型,キビなど)と,pHの低下(H^+-ジャンプ)が有効な種(H^+型,トウモロコシなど)存在することが分かっているので、種々のC_4植物の間で、Na^+型とH^+型がどのように分布しているかを調べた。単子葉植物のイネ科29種、双子葉植物4種の中で、H^+型の種は、イネ科キビ亜科のウシクサ族とトダシバ族という、系統上比較的近緑の2族に限られていた。b)pH電極により、ピリビン酸添加時の葉緑体懸濁液のH^+濃度変化を観察した。H^+型のC_4種(トウモロコシとジュズダマの葉肉細胞葉緑体懸濁液に、光照射下でピルビン酸を加えると、外液のアルカリ化が数秒間観察された。このpH変化から計算したH^+減少の初速度と、同一条件で測定したピルビン酸取り込み初速度との比はほぼ1であった。また、タンパク質修飾試薬のNEM(N-Ethylmaleimide)やNBD-C1で葉緑体を処理すると、ピルビン酸添加時のpH変化とピルビン酸取り組みとが、同程度に阻害された。これらの結果より、H^+型のC_4種におけるピルビン酸取り組み機構は、H^+とピルビン酸の一対一共輸送であることが示された。 2)主にソルガムの葉緑体を用い、包膜のピルビン酸輸送体蛋白の、特異的標識化による同定を試みた(発表論文2)。0.1〜1mMの^<14>C-NBD-C1処理により,7つのペプチドのバンドが標識された。そのうち、NBD-C1処理中にピルビン酸アナログを加えることで、明らかに28kDのバンドの放射能が減少し、標識化からの保護がみられた。従って、この28kDのバンドがピルビン酸輸送体タンパクである可能性が高い。現在、このペプチドに対するcDNAクローニングの準備として、これを濃縮単離し、その部分アミノ酸配列の決定や抗体作成を試みている。
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