研究概要 |
光化学系I(系I)反応中心複合体の構造と機能について,次のような結果を得た。 1.アミノ基を架橋する試薬dithiobis(succinimidylpropionate)でホウレンソウの系I粒子(PSI-200)を処理すると,系Iのサブユニットの間に架橋がかかる。架橋されたPSI-200でも電子はP700からFB,FAまで正常に流れていてた。架橋しなかったものは熱/EG処理で容易に小さなサブユニットは反応中心から解離し,FB,FAは破壊されるが,架橋した系I粒子では,解離しなくなり,FB,FAが安定化された。 2.ホウレンソウの葉緑体を表面活性剤Triton X-100で可溶化して得られるPSI-200(Chl/P700=200)を室温で2時間,照射した。その結果,DCIPH_2→MVの電子伝達活性は阻害され,クロロフィル(Chl)が退色した。一方,P700は僅かな減少であった。この光阻害やChlの退色には酸素分子が関与していること,光阻害の部位はA1であろうということが考えられる。PSI-200をHydroxylapatiteのカラムで精製した標品(HA-40と略,Chl/P700=40)では光阻害も退色もほとんど認められなかった。以上より,系I反応中心タンパク質に約100分子のChlが結合しているが,そのうち約60分子のChlはTriton X-100の存在下で遊離の状熊か,ルーズに結合していると考えられる。それらのChlは光により酸素を活性化し,この活性酸素がA1を破壊するものと考えられる。系I標品にこのようなChlが存在すると,速い光化学反応を正確に測定出来ないことがある。そのため,系I標品をHydroxylapatiteのカラムで精製して用いる必要がある。 3.系I反応中心複合体をリン脂質のリポソームの中に取り込ませ,トリプシンで処理した。未処理のものより分子量が小さくなったP700を含む2種類の複合体が得られたので,活性や色素の結合量などについて調べている。
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