研究概要 |
この研究は若い葉の分裂細胞を利用して,未研究及び殆ど研究されていない(これまで約40%が報告されている)木本植物の染色体研究を行い,欠けている高等植物の基礎データを明らかにすることである。研究代表者荻沼はこれまでの成果発表(トチュウ科・ヤマモモ科・ニレ科)に加えて,平成3年度には分担者戸部と共に,マンサク科の成果を論文発表した。 平成3年-4年度の2年間に,関東・関西の公的機関所有の植物園(大阪市大附属植物園・農水省浅川実験林・国立科博筑波実験植物園等)に栽培されている日本産・外国産の木本植物,特にマンサク亜綱植物の一部とその類縁植物群の若い葉を採集し,これらの染色体の観察を行った。マンサク亜綱24科のうち,これまで18科の染色体の観察を終えた。これら研究成果の一部(Simmondsiaceae,ヒルギ科,フトモモ科,クルミ科等)は平成4年度中に論文発表(印刷中)した。マンサク亜綱18科からの染色体研究の結果,属内の染色体数・間期核・分裂期前期・分裂期中期の染色体の形態は良く類似し,属内では染色体の形態の変異が少なく,安定していることがわかった。一方,属間での染色体の形態は大多数の科で同様に安定していたが,ニレ科のように属間で染色体の形態変異がみられる属があった。特にニレ科では,分裂期中期染色体が,動原体を中部に持つ染色体を80-100%と高い割合で持っている属と,この割合が30-50%と低い属とに2大別された。科間では染色体数及び染色体の形態は共に変異し,亜綱内で多様性がみられた。マンサク亜綱内の系統関係,核形態的類縁関係をすでに観察が終了した科(属)を論文にしてゆくと共に,残りの6科を研究観察し,本亜綱内の核形態的類縁の論文原稿を完成する予定である。
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