パフンウニの卵と精子の受精能は5〜10mMのアデノシンによって長期間にわたって維持されることが分った。卵についてはエゾバフンウニの場合と同様な結果であるが、精子については初めての検討であり、このことは性の如何をとわず配偶子の受精能に対しアデノシンが有効に働くことが確認された。一方リン酸基を失なった形のアデニンは卵に対してはむしろ有害であったが、精子に対しては特に有害という結果はえられてならず、この差は何に由来するかは今後の課題である。また精子の運動性に対してはアデノシン、アデニンのいずれも特に作用しないと視認の限りでは判断されたが今後は、より客観的な運動解析を行なう予定である。魚卵精子に対するアデノシンの効果はこれからのシ-ズンであるニシンを用いて実施する準備をすすめている。 エゾバフンウニ卵の場合と同様に卵内のATB量はバフンウニ卵でも高いレベルが維持されることが分った。精子に関しても予備的測定では同様な結果をえているが、より高精度な分析法に切りかえて更に調べる予定である。またATPaseによって分解されたcagedーATPをあたえた場合の効果も調べたい。 精子は流に侵入するに先立って先体反応とよばれる特異的形態変化を示すが、バフンウニ精子の受精能の先活はこの生体反応を引きおこす能力の先活と直接関連してなり、アデノシンはこの能力を長く維持させることによってその受精能を維持するのであることも分った。これは先体反応においてイオンチャンネルが重要な役割をもってなり、これにATPが関与するためと判断される。
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