魚類のように、水中で体外受精を行う動物にとっては、放精と放卵のタイミング正確に一致していることが、受精を成功されるために必須となる。ヒメマス(陸封型ベニザケ)では、雌雄間で信号を交換すること、即ち、互いにコミュニケートすることにより、配偶子放出のタイミングを一致させている。 本研究は、(1)雌雄間で交換している信号とその特徴は、なにか?、(2)その信号を受容・処理している感覚系はなにか?、および、(3)受容した信号を、中枢でどのように処理して、行動として出力しているのか?、について明らかにすることを目的とした。 実験行動学的手法、および、電気生理学的手法を用いた実験の結果、ヒメマスは、体振動に由来する振動的信号、および、視覚的信号の両者を雌雄間で交換していること、振動的信号を、側線神経系で受容・処理した後、視覚的信号と統合して行動として出力していること、等が判明した。さらに、側線神経系の第1次中枢(延髄内側核)から、振動刺激と同期した電場電位が誘発されることが判明した。
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