本年度、カイコ体液性レクチンの遺伝子解析をおもに行った。カイコ5令ガットパ-ジ前日の血球細胞より作製したλgt11expression libraryからモノクロ-ナル抗体aBHー1を用いてイムノスクリ-ニングによってクロ-ンをえた。このクロ-ンのコ-ドする蛋白質はウエスタ-ンブロッティングによりaBHー1の抗原であることが確認された。 このクロ-クのN末側57ヌクレチドを合成、プロ-ブとしてヌクレオタイド ハイブリダイゼイション スクリ-ニングにより得られたクロ-ンはopen reading rfameと思われる全領域を含むものと考えられる。このopen reading frameは約1300ヌクレオチドからなり、コ-ドする蛋白について機能検定によって、レクチン活性を調べつつある。 絹糸腺の蛹化にさいしての崩壊に対するレクチンの役割については、前部絹糸腺より抽出した蛋白に強い血球凝集反応があり、それがaBHー1抗体で完全に抑制されること、また、組織化学的に内側を覆うクチクラ層と細胞のクチクラに接する部分にこの抗体に強く反応する物質が存在することが確められた。ただし、この蛋白を抽出し、イムノブロッティングで調べたところ、体液中のレクチンよりかなり分子量が小さく、約49kDであった。蛹化前の前部絹糸腺を取出しエクジソン存在下で培養すると、そのまま崩壊過程が場行するが、この培養液中にレクチンのリガンド糖である、グルクロン酸、ガラクツ-ロン酸を適量加えると、その崩壊過程を完全に阻止できることが分り、変態に伴う幼虫組織の崩壊に、このレクチンが関与している証拠がさらに追加された。
|