研究概要 |
各種動物卵に於いて受精初期に細胞内カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_1)が一過性に増大する。これには小胞体膜に存在すると考えられているイノシト-ル三燐酸(IP_3)受容体が関与していると考えられている。しかしこの受容体の性質は良く分かっていない。そこで本研究の目的は以下の三点である。1.ウニ未受精卵より小胞体に由来すると考えられる膜画分を得、それよりのカルシウム遊離の基本的性質を明らかにする。2.その膜画分よりIP_3受容体を分離精製しその性質を明らかにする。3.さらに精製した受容体を燐脂質と混合し、プロテオリポソ-ムに再構成しカルシウムチャネルとしての性質を有するかどうかを調べる。 研究の結果以下の事が判明した。(1)ウニ未受精卵より常法に従ってミクロソ-ム分画を調製すると、それはIP_3添加によりカルシウムを遊離する。この反応はヘパリンにより阻害される。(2)カフェインによっても遊離が起こるが、これは(1)とは独立した遊離機構で「カルシウムによるカルシウム遊離」だと考えられる。(3)ミクロソ-ム分画をTriton Xー100で可溶化しDEAEーCellulose,HeparinーAgarose,ConAーSepharose及びIP_3ーSepharoseを用い分離精製したところIP_3との結合能が1000倍以上に濃縮された。その最終的な分画をSDSーPAGEで観察したところ分子量214及び209kDのタンパク質が検出された。この二つの成分の関係は未だ明かではない。(4)この二種類のタンパン質は、ラット小脳のイノシト-ル三燐酸受容体に対する抗体(御小柴研より分与される)とは交叉しない。(5)以上のごとくIP_3にたいし結合能のあるタンパク質が相当濃縮された。しかし最初のミクロソ-ム分画に於けるこの成分はネズミの小脳などに比べると一千分の一以下と非常に少ない。それ故現在のところ再構成実験を行うには試料が少ない。現在方法の改良につとめると共に、試料を蓄積している。
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