研究概要 |
両生類の初期発生においては、各かつきゆうの運命を定める決定因子がきわめて重要な働きをするが、その存在を裏付ける強力な実験結果があるにもかかわらず、実体はまだ明かになっていない。本研究では、決定因子がタンパク質であると考え、卵形成期におけるさまざまな細胞質抗原の蓄積の様子を明らかにすることを第一の目的とした。また、決定因子は、卵において極性分布をすることが示唆されており、極性分布を示すタンパク質抗原の存在を明かにすることを主眼とした。 卵黄タンパク質が含まれない初期卵母細胞の細胞質分画と成熟卵の105,000xG上清分画を抗原としてモノクローナル抗原を作製した。そしてこれら抗体に対して、1:それぞれの免疫抗原に対するELISA,2:卵巣切片に対する免疫組織化学的染色、3:それぞれの免疫抗原の対するウエスタンブロッテイングの,3段階のスクリーニングを順に行った。この結果、時期特異的抗原認識の抗体を2群10個、分布特異的抗原認識の抗原を4群22個、得ることができた。 分布特異的抗原認識の抗体は、type A (動物半球の細胞質を認識)、type V(植物半球の細胞質を認識)、type P (細胞質の周縁部を認識)、type N(核質を認識)の4群に分けられた。type P,N は卵形成期をとおして部域性を示し続けたが、type A,V は、卵形成期中期以降 (st.IV-VI) に部域性を示することがわかった。また、成熟卵母細胞における3次元的な分布を検討した結果、さらにA_1,A_2,V_1,V_2と分類されることが判明した。これらの抗原は、動物および植物半球の断片から抽出したタンパク質を用いてのウエスタンブロツテイングの解析のよっても、その極性分布が確認できた。
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