研究概要 |
本研究の目的は(1)ミオシンのATP分解部位とアクチン結合部位の位置関係と(2)アクチン結合によるATP分解部位の構造変化を明らかにする事である。そのためにATPを嵩ばったものに繋いでアクチンと結合したミオチン分解させるといった方法をとった。嵩ばったものとしては,非常に反応性の高いSH基を1個だけ持つコウジカビのアミラ-ゼ(分子量約5万)を用い,そのSH基にアミノヘキシルカルバモイルメチルATPを二価性架橋試薬,サクシニミジル4ー[Pーマレイミドフェニル]ブチレイトによって結合させた。未反応の試薬はゲル滬過法によって除去し,アミラ-ゼATPはDEAEイオン交換カラムを使った高速液体クロマトグラフィ-によって精製し,限外滬過法によって濃縮してから使用した。タンパク質濃度とリン酸含量とからこの物質がアミラ-ゼとATPの1対1結合物であることを確めた上でミオシン及びアクトミオシンに分解させた。結果は予期に反し,ミオシンによる分解速度とアクトミオシンによる分解速度があまり変わらなかった。この反応条件下ではアクトミオシンの方が数十倍活性が高いはずであるのにそうならないのはアクチンがアミラ-ゼと結合したATPの接合を妨げているためではないかと考えられた。そこで,アミラ-ゼとATPを繋いでいる鎖(ジアミノヘキサン)をジアミノブタンやエチレンジアミンに替えて短くしたところさらにアクトミオシンのATP分解活性が下ったので上記の推察が正しいという事が確められた。ATP結合部位とアクチン結合部位はかなり近いのではないかと思われる。
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