研究概要 |
西南日本内帯に位置する中・古生代石灰岩台地の基盤をなす緑色岩について,秋吉台,帝釈台,阿哲台を,西南日本外帯では四国カルスト,中津明神山の緑色岩を対象とし,主化学成分,微量元素,希土類元素の分析をおこない,その地球化学的特徴を明らかにした。また,現在活動する海洋島のハワイとこれに連続する天皇海山列に認められる,希土類元素存在度のアナロジーで,緑色岩の成因を考察した。1)コンドライト規格化希土類元素存在度パターン:石灰岩台地基盤緑色岩のすべてに軽希土(Light Rare Earth Element)の濃集を特徴とする,ほぼ直線的な右下りのパターンが得られた。とくに田崎ほか(1989)で指適したLIL元素(Large Ionic Lithophile Element)に富むマントルから導かれた可能性のある,帝釈台のアルカリ玄武岩質の岩石では,希土類元素,とくに軽希土(LREE)の濃集が著しく,Nd,Sr同位体比での予測をうらづけた。この試料を除けば帝釈台と秋吉台の緑色岩のコンドライト規格化パターンは,極めて類似しており,ハワイ-天皇海山列にみられるような同一のホットスポットからのマグマに由来する海山列という考えが適用できそうである。しかし,LREE対P_2O_5の関係をみると,両者は全く異なる分化傾向を示し,ハワイ-天皇海山列が70Maの時間差にもかかわらず,同一の分化線上にあるのとは対照的である。この結果は帝釈海山と秋吉海山を同一起源の海山列とみなせないことを示唆する。 一方,四国カルスト緑色岩の希土類元素の濃集度は著しく低く,LIL元素に相対的に乏しい起源物質から生じたアルカリ玄武岩マグマの性質を示しており,海嶺に近いホットスポットに由来した可能性が考えられる。
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