研究概要 |
東シナ海東部から採取した柱状堆積物中の浮遊性有孔虫化石群集の時間的変化の解析を行ない、次のような結果を得た。本コアの最下部は約28,000年前で、17,000年前までこの海域は沿岸水の影響を受けていたと考えられる。その後、8,000年前にかけて表層水は淡水の影響を強く受けていたと推定される。8,000年前〜6,000年前にかけて急激に淡水の影響は弱くなり、6,000年前頃からは黒潮の影響が表れ始め、それ以降は現在とほぼ同様の海洋環境であったと考えられる。 八代海中央部から採取した3本のコアについて、帯磁率による対比を行ない、そのうちYS91-1のコア(6m)について、微化石・ ^<14>Cの測定・最下部のテフラに含まれるガラスの屈折率やEPMAによる化学分析を行なった。その結果、コア最下部の年代は25,000から22,000年前と推定される。erosional surfaceが480cm付近で認められ、その直上でElphidium crispumやAmmonia beccariが初産出する。これらの種は、現在八代海東部の淡水の影響が認められる河口付近に特徴的に分布している。362cmの層準での ^<14>Cの測定値は、8,911+203年前である。また、約100cmでの ^<14>Cの測定値は4,809+140年前である。この付近からPseudorotalia gaimardiiやFlorilus japonicusが普遍的に産出するようになり、外洋水の影響が著しくなったと推定される。それ以降、現在と同様の海洋環境になったと考えられる。 更に、これらの結果と太平洋側の四国沖のピストンコアとを比較検討した結果、四国沖では最終氷期に南下していた黒潮流軸が本州に約9,000年前に北上し始め本州に近づき、約5,000年前以降は現在と同様の海洋環境になったと考えられる。この最終氷期から現在への温暖化に伴う海洋環境の変動の傾向は東シナ海や八代海と同様の傾向を示していると考えられる。
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