研究概要 |
中新世から第四紀(17Maから0Ma)の北太平洋新第三系より殻面が褶曲した一群の珪藻種が報告されている;Thalassiosira yabeiグループ(=Thalassiosira brunii,T.flexosa,T.grunowii,T.mioplicata,T.moholensis,T.praeyabei,T.temperei,T.yabei他)。これらの種は、極めてよく似た殻面褶曲(丸い殻面の半分が凹で残り半分が凸)をもち、各種間の中間形を多産することから、一連の進化系列にあるものと考えられる。 珪藻の形態学的な進化速度と、北太平洋の中新世海洋古気候や古海洋環境の変遷に伴う珪藻生産量の増大との関連について期礎的なデータを得るため、中期〜後期中新世のThalassiosira yabeiグループから11のmorphotypeを識別し、それらの殻の計測を行った。その結果、以下のことがらが明らかになった。 1)Thalassiosira yabeiグループの進化系列上のストックはT.praeyabeiである,2)形態の変化速度は13-15Maに増加する,3)この時期にT.praeyabeiの大半のdescendantsが出現する。この形態上の進化速度の増大は、中新世中ごろの寒冷化に伴う涌昇の活発化や珪藻の高生産による増大胞子の形成と密接に関連するものと思われる。 なお、今回明らかにされた進化系列はまた、北太平洋新第三系における新たな珪藻化石帯の設定や、新属Plicatodiscusの提唱へとつながるものと考えられる。
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