研究概要 |
バクテリア起源磁鉄鉱とは走磁性バクテリア中に含まれるが,生物学的な興味とともに,地球科学,鉱物学の立場からも高い関心がある.例えば堆積岩中の古地磁気のキャリアーとしての役割が推定され,本研究でも具体的に確認された.進化とのかかわりで,地球史における大気中の酸素濃度の時代変化にも関連あると考えられる.鉱物学からは,無機起源のものと,これらバクテテリア起源磁鉄鉱が違うか,同等かという基礎的関心等あるが鉱物学の立場からの研究は非常に少なかった.本研究では以下のテーマにつき行ってきた. 西太平洋及び日本海の深海底堆積物中のバクテリア起源の磁鉄鉱の抽出と鉱物学的特徴の解明及び他の構成鉱物の分析・新潟県下の池,潟から現生の走磁性バクテリアの採集と磁鉄鉱の抽出・現生バクテリア中の磁鉄鉱の伸長方向,微細構造,結晶外形等の電顕鉱物学的解明・現生の走磁性バクテリア中にふくまれる磁鉄鉱以外の鉱物の解明.結果として,深海底堆積物に一般的に多量のバクテリア起源の磁鉄鉱が含まれこれが古地磁気のキャリアーである事が確認された.日本海の堆積物からはじめて確認された.鉱物学的特徴を組成・構造等の面からあきらかにした.チタンの含有量に特徴が見られた.鉱物自体は無機起源のものとかわりはない.形態的多様性がみられたが,伸長している結晶学的方位を調べこれまでいわれている一般的方位と異なっているもの(a軸方向)が涙滴型にみられた.現生のバクテリア中から硫酸アンモニウムであるマスカナイトの結晶が初めて確認された.バクテリアの代謝に関連した一つの重要な発見と考えられる. 鉱物学分野でこの磁鉄鉱を詳しく扱ったのはほとんど最初と考えるが,そういう研究方向を,特に日本の鉱物学界に示唆しえたとしたら,本研究も一定の役割を果たし得たのではないかと考える.
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