研究概要 |
(1)原猿類浅指屈筋の解析 目的:(山田,1986)がヒト成体の精査によって提起した,浅指屈筋が2群の筋原基の癒合によって形成されるという仮説は,個体発生学的にはGrafenberg(1906)の所見で支持されるが,従来の系統的な説明とは合致しない.そこで,原猿類浅指屈筋の筋束構成と支配神経を精査し,上述の仮説の検定を行なった. 材料:キツネザル上科(Lemur catta,L,fulvus,Cheirogaleus medius Daubentonia madagascariensis)、ロリス上科(Nycticebus coucang、Loris tardigradus,Galago crassicaudatus),メガネザル上科(Tarsius syrichta). 結論:原猿類の浅指屈筋もヒトと同様,本質的にはヒトと同様2つの独立な筋束の癒合によって形成されている.さらに興味深いことに,霊長類のなかでも原猿類ではこの二原基の癒合様式に相違があって,キツネザル型とロリス型に区別され,分類群の関係を反映している.今回検索の機会を得たメガネザルは,系統学的位置が論議されているが,浅指屈筋の筋束構成からはロリス型に分類され,原猿帰属説が支持される. (2)希少原猿類解剖所見の立体ビデオライブラリの作成 目的・方法:入手因難な動物標本の実体顕微鏡下での解剖所見を立体ビデオライブラリとして,希少動物の解剖所見として保管し,共同研究者との所見の交換をも行なう,日本光学製実体顕微鏡用ビ-ムスプリッタに偏心ビデオカメラマント(特注)を介して2台のTVカメラを装着左右の光路の映像を合成アンプ(特注)で合成して1台のモニタで交差法立体視によって立体観察する. 結果:原猿類前腕屈筋群の解剖所見を立体録画法を確立し,立体ビデオライブラリの構築中である.一部は近くSchwartz(Pittsburgh大)に送付して共同研究への利用を開始する.
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