研究概要 |
当研究課題では、下地M(M:W,Mo,Ta,Nb)表面上に結晶構造の異なるPdを、10^<-8>Pa下で真空蒸着し、PdのsubmonolayerからPd固有の結晶構造を持つ成長層が形成される迄の、各原子層の配列構造との遷移過程、およびその結合状態等について、一原子分解能電界イオン顕微鏡(FIM)と電界脱離法により調べられた。 1.下地界面にあるPdの1〜2原子層の原子配列構造は、何れの下地面に於いても下地表面の原子配列構造と全く同じ配列構造を持つ疑似形態層(Pseudomprphiclayer)を形成している。そして、この構造は極低温下(〜20K)に於いても観察された。 2.そのPd単原子層の疑似形態層は下地面に対して最も安定で、仕事関数は最大値を示す。 3.Pd単原子層の脱離電界強度は、下地原子の蒸発電界強度に強く依存し、Pd固有の蒸発電界強度よりも遥かに高く(F_<de8>(Pd/w)=52V/nm,F_<de8>(Pd/Ta)=46 V/nm,F_<de8>(Pd/Mo)=44 V/nm,F_<de8>(Pd/Nb)=39 V/nm),下地原子の蒸発電界強度よりも僅かに低い。また、Pd単原子層の脱離電界強度に与える水素効果についても調べられた。 4.W(011)Ta(011)、Mo(011)表面上に20〜30のPd原子層を蒸着させた場合に、蒸羞原子固有のPd【111】方位の明瞭な結晶面が成長することが確認された(Pd【111】/U(011))。Pd固有の成長層は、下地界面にある最も安定な1〜2原子層のPd疑似形態層上に形成されるが、両原子届は連続的には移行せず両原子配列相の中間層には数原子層のbufferlayerが存在する。しかし、この中間層では規則性の在る明瞭な原子配列構造は分析できなかった。これらの中間層を、更に定量的に分析するめには、試料の極低温化等の装固の工夫が必要であろう。 5.W(011)、Uo(011)表面上での微小Pd単原子層同志の熱拡散の挙動についでも分析された。
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