研究概要 |
横ゼーマンレーザの注入同期による光論理素子に関する3年間の研究の結果以下の成果が得られた。(1)633nmHeNe内部鏡レーザの直交偏光発振をもたらす自然軸とレーザ共振器の損失の異方性の強い相関関係のあることが明らかとなった。(2)横ゼーマンレーザにおいて,その偏光状態は共振器の損失の異方性により異なる。比較的異方性の大きなレーザにおいては,印加磁界の方向に依存せず自然軸の方向に偏光状態が定まる。一方異方性の小さいレーザでは,磁界の方向とその強度に依存して偏光状態が定まる。特に中磁界においては,特異な偏光面の回転と隣接モード間で直交性を持たない偏光スイッチング現象が見い出された。(3)複合共振器を用いてレーザからの反射光を注入すると,この共振器の共振条件により直交偏光モード間で光スイッチング現象が見い出された。このスイッチングはレーザの損失の異方性が小さい場合,レーザと反射鏡間の損失の異方性に依存する。一方異方性が大きい場合,レーザ自体の特性により偏光スイッチング特性が定まり,さらに反射鏡の掃引方向に関する偏光スイッチングのヒステリシス現象が見い出された。(4)スレーブレーザに外部からマスターレーザ光を注入した場合,反射光を注入した場合と同様に,ヒステリシスをともなう偏光スイッチング現象が観測された。(5)複合共振器の系において横ゼーマンレーザを構成し,偏光スイッチング現象を調べた結果,磁界強度に依存して偏光状態が制御出来ることを見い出した。(6)上述の成果をふまえ,共振器の異方性の大きさに依存した光フリップフロップ等の高速の光論理素子の構成が期待出来る。そのためには光学系の安定と,マスターレーザおよびスレーブレーザの安定な周波数制御が重要な課題となる。
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