研究概要 |
高輝度レーザー光照射ターゲット上に発生する微小高密度高温プラズマから放出されるX線を分光計測した。前年度,計測器等の整備を行ないデータ取得を開始した。本年度は原子番号6から82番までのX線スペクトルを高分解斜入射分光器により系統的に取得し線スペクトルX線の原子番号依存性の比例則解明に役立てた。またX線放出強度の定量的情報を得るためシンクロトロン軌道放射光源を用いて較正されたX線検出器を用いて測定は行なわれた。以上により各種原子番号に対応する複雑な線スペクトル分布の絶対光量の評価が可能となり,この線源を用いた応用研究の可能性の評価が詳細に行なえるようになった。 次に極短パルス高強度レーザーの具体的応用を計るためパルス幅20ps,エネルギー30J,波長0.53μmのレーザー光を長さ6mm,幅50μmに線状集光し線状プラズマを生成した。個体ターゲットとしてポリエチレン薄膜上にフッ化ナトリウムをコートしたものを用いた。上記極短パルスレーザー光によりターゲット上に瞬時に完全電離したフッ素とナトリウムの多価イオンが生成される。高分解X線分光器により電子1個のみ有する多価イオンからの強い線スペクトルが観測されている。極短パルスレーザー光により生成されたプラズマはレーザー照射後自由膨張しつつ急速に冷却される。この過程で高電離イオンが電子と再結合を繰り返すことになる。上記線状プラズマ中で急速な光却,再結合が進行すると特定の準位間で短時間反転分布が生成される。利得測定の結果,利得係数7/cmが得られた。以上により本方式によるX線レーザーの可能性が明確になった。X線輻射過程の基礎,反転分布生成に関し種々の有益な知見が得られた。
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