研究概要 |
本報告者らが定案した3次元に拡張された残留応力場における疲労き裂の寿命推定法を,PMMA材を用いて以下のようにして検証した。 (1)残留応力のないPMMA材を用いて, 3次元のU予測による寿命推定法に必要となる2次元の基礎データ, da/dN-△Keff関係およびU-R関係を求めた。 (2)荷重負荷中にき裂面にニュートンリングを発生させることは,実験装置の複雑さから出来なかった。代わりに,本報告者らが新しく開発したき裂面でのナトリウム光の全反射を利用した方法によりき裂開閉口挙動の観察を行った。 但し, き裂面の変形状態は原理上捉えられないが, き裂が前縁から閉じていく様相を明瞭に捉えることができた。(3)(2)と同じ実験を残留応力試験片に対して行い, き裂が圧縮残留応力場から閉じていく様相が明瞭に観察された。 また, 無負荷状態では,き裂面にニュートンリングを発生させることに成功した。その結果, 引張残留応力場で, き裂面が湾曲しているのが確認された。 以上より3次元き裂の開閉口挙動に対する知見を得た。 (4)K値の計算には, 主に白鳥らの影響係数法とNewman-Rajuの式を用いた。 当初予定したF.E.M.による方法は, 非常に大きな労力を要することがわかったため上2つの方法の確認にとどめた。 また, 当初の予定にはなかったが寿命推定法をこのPMMA材にも適用し良い結果を得た。 次に, これらの知見をもとに,残留応力を持った金属材料に対して寿命推定法を適用し,実験結果と比較した。 残留応力場としては, SM41B材(当初HT80の予定であったが入手困難のため変更)の電子ビーム溶接による残留応力場(突合せ溶接とほぼ同じ)およびSUSとSPVのクラッド鋼における残留応力場の2通りである。手順はPMMA材のときと同様に(1)(2)(3)(4)と行った。 その結果,筆者らが提案した3次元に拡張された残留応力場における疲労き裂の寿命推定法が, 有効であることが確証された。
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