研究概要 |
本研究では,熱CVD法により被覆したTiC膜内の残留応力のX線応力測定法により測定するとともに,その残留応力値に対する膜厚,基材厚さの影響を調べた.また,被覆膜の密着強度に対する残留応力ならびに熱衝撃の影響を調べるとともに,転がりやフレッチング疲労強度に対する被覆膜の効果についても検討した.得られた結果を要約すると,以下のようである. 1.CVD被覆したTiC膜の残留応力はMnKαによる(400)回折面を用いて可能である. 2.CVD法により被覆したTiC膜内には数GPaといった高い圧縮残留応力が導入される. 3.膜内残留応力値は基材厚さならびに膜厚とともに増大する. 4.CVD法により被覆したTiC膜の密着強度は膜内の圧縮残留応力値と半価幅値に比例して大きくなる.膜の密着強度はX線的に求めた残留応力と半価幅から非破壊的に推定することが可能である. 5.TiC膜の密着強度と圧縮残留応力は熱衝撃の繰返し数とともに低下する.また,膜のはく離繰返し数は温度が高い程減少する. 6.転がり接触疲労において,TiC膜内の圧縮残留応力値は繰返し数の増加とともに減少する。TiC膜は転がり接触疲労強度に対してはあまり有効ではない. 7.TiC膜を被覆した材料の通常疲労強度は被覆しなかった材料に比べて低下する. 8.TiC膜を被覆した材料のフレッチング疲労強度は被覆しなかった材料に比べて増大する.
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