研究概要 |
新素材としてのセラミックスは耐熱性,耐腐食性,耐摩耗性などに優れており,高温部材への応用が期待されている.しかし,ぜい性材料であるために衝撃に弱く,特に高温での使用を目的とする場合は耐熱衝撃性に難点があり,強度部材として実用に供するためには耐熱衝撃性を評価する必要がある.本研究は,一般にばらつきが大きいセラミックス材料の耐熱衝撃強度について,液中急冷法による実験と理論解析により耐熱衝撃強度に及ぼす各種因子の影響について研究したもので,研究内容は以下の通りである. 1.熱衝撃試験装置を製作し,耐熱衝撃強度のばらつきの原因となる因子について実験による検討を行なった. (1)試験片を単体で自由落下させると冷却媒体中での落下方向が定まらず,耐熱衝撃温度がばらつく. (2)試験片の形状や落下高さ,および冷却媒体の粘性などによっては,冷却媒体突入時に雰囲気ガスの取り込みが起き,耐熱衝撃温度差が大きく評価される傾向がある. (3)冷却媒体の沸点が低い場合には試験片落下時に媒体が沸騰を起こし,耐熱衝撃温度差にばらつきが生じる. (4)冷却媒体の熱伝導率が高くなると,耐熱衝撃温度差が小さくなる傾向がある. 2.試験片の冷却曲線の測定結果から冷却媒体と試験片との間の非定常熱伝達率を同定し,これに基づいて有限要素法による熱衝撃応力解析を行なって,理論的な面から熱衝撃強度に及ぼす各種因子の影響について検討した. (1)試験片落下時の雰囲気ガスの取り込みは,冷却媒体と試験片との間の熱伝達に極めて大きな影響を及ぼす. (2)本研究で使用した試験片の熱衝撃時の応力は,冷却媒体突入後数十msecで最大値に達する. (3)試験片表面の熱衝撃時の軸方向応力と円周方向応力は,ほぼ同程度の引張応力になる. 3.セラミックスの熱衝撃試験法に関する技術指針を得た.
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