研究概要 |
実用高靭性構造材料であり、近年、金属系の先進材料として各種自動車部品や産業機械に広く使用されつつある球状黒鉛鋳鉄を用いて、高サイクル疲労試験を行い、表面に多数発生する微小分布き裂の発生・進展特性を画像処理技術と統計的解析により考察して、平滑材の疲労に対する余寿評価の基礎資料を得ることを目的として、実験的・統計的に考察した。今年度得られた主な研究実績をまとめると以下のようになった。 1.レプリカ法による表面連続観察と画像処理技術を用いて,微小表面分布き裂を検出・測定して、破断寿命を決定する最大き裂(主き裂)を特定した。 2.主き裂の発生起点を表面と破面の詳細な観察により特定して、起点が主に表面直下に存在する鋳造欠陥としての微視的引け巣であることを確認した。起点欠陥部の応力軸に直角方向の面積をAとすると、√A=60〜160μmであった。 3.起点欠陥部を任意形状き裂と考えた場合の応力拡大係数K_<Imax>と き裂発生寿命N_1との間には負の相関があることが分った。 4.表面き裂進展速度da/dNをき裂半長aまたは応力拡大係数範囲△Kで整理すると、高応力振幅ではき裂進展の初期段階でばらつきが大きくda/dNの増加・減少を繰返しながら,次第にその振幅を収束して進展する傾向があった。一方,低応力振幅ではda/dNは初期段階で一度減少して極小値を示してから、aまたは△Kの増加とともに増加する傾向があった。 5.本研究で定義した発生寿命N_1、進展過程寿命N_pおよび破断寿命N_fの分布は3母数ワイブル分布で表示できた。名寿命分布のばらつきの程度を表す変動係数ηはaの増加とともに減少し、高応力レベルの方が低応力レベルの場合よりηはより小さかった。 6.N_1とN_fとの間の順位相関係数Zは非常に小さく、材料や応力振幅によらずZ<0.3であったが,aの増加とともにZは増加して2a≧700μmとなるZ≒1となった。
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