研究概要 |
はじめに、本研究室所有の超高速度カメラ(CORDIN330A,最高撮影速度2百万コマ/秒)を用いて、透明材であるPMMA平板中を高速脆性破壊中のき裂先端前縁形状を撮影した。このような、高速き裂前縁形状の高速度連続写真は本研究者の知る限りでは、まだ撮影されていなかった。PMMA平板中の屈折率の板厚方向分布の非一様性のために生じている高速度写真の歪を画像処理システムにより補正して正確なき裂前縁形状の時間変化を測定した。本研究で使用したDCB試験片では、板厚中央のき裂前縁が板表面より先に進むことが明らかになった。さらに、三次元破壊のメカニズムとの関連より、き裂前縁が板表面となす角度を詳細に調べた。これにより、き裂停止時のコ-ナ-点における特異性オ-ダは0.45と0.55の間に分布していることが明らかになった。従ってBazat,Estenssoroの仮説"き裂は、コ-ナ-点の特異性が内部のき裂前縁の特異性r^<-0.5>と一致するように、すなわち板表面でもエネルギ-致放率がゼロにならないように、進展する"が平均的意味で正しいことが分かった。 一方、数値シミュレ-ションによる研究としては、はじめに、20節点アイソパラメトリック要素を用いる三次元移動有限要素法を開発した。また、本研究者らによって導出された動的J積分の等価領域積分表示を定式化した。これにより、き裂前縁に沿った動的エネルギ-解放率の計算が可能になった。さらに、動的J積分と応力拡大係数の変換に関して、平面歪・平面応力遷移式を導いた。数値解析例として、平板中を高速伝播する直線前縁の解析を行い、動的J積分、すなわちエネルギ-解放率が、板表面近傍で急激に小さくなることを明らかにした。実験のシミュレ-ションより、曲線前縁に沿って動的J積分分布はほぼ一様であることが分かった。なお、このような三次元高速破壊シミュレ-ションは世界的にも類例がないことを付記する。
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