研究概要 |
板材のプレス成形においては,製品の軽量化の図るための極薄板の利用が増大している。極薄板を使用すると軽量化を図ることはできるが,一方では,伸びが小さくなるために成形限界が低下するという新たな問題が生じる。このような成形限界の板厚依存性は,塑性変形に伴う板材表面の粗面化現象と密接に関係している。 本研究では,成形の途中段階で破断危検部をサンドペーパまたはバフで研磨し局部くびれ発生のきっかけとなる板表面凹凸を除去したのち再び成形を進めるといった方法によって,金属薄板の成形限界向上に対する表面あれの除去効果を検討した。まず,剛塑性有限要素法によるシミュレーションを行い,塑性変形の進行に伴う表面あれ発達状況および成形限界に対する表面あれ除去の効果を検討した。次にアルミニウムと軟鋼板を使用してひずみ比が異なる種々の成形実験を行い,成形限界の向上と表面あれ除去の関係を調べた。得られた結果を要約すると次のとおりである。 1.塑性変形の進行に伴って生じる板表面のあれを板厚の不均一さとして捉えると,その影響は板厚が薄い場合ほど顕著になり,これが成形限界を低下させる原因であると考えられる。 2.この表面あれを成形の途中段階で除去すると成形限界が向上する。表面あれ除去の効果は極薄板の場合ほど大きい。表面あれ除去時期としては,局部くびれ発生の直前が最も効果的である。 3.このような成形と表面あれの除去とを交互に繰り返していくと成形限界がさらに向上する。しかし,表面あれ除去の効果は変形の進行に伴って徐々に小さくなるので,成形限界の向上に対する表面あれ除去の効果には限界が存在する。
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