研究概要 |
構造用セラミックス(Al_2O_3,SiC,Si_3N_4,ZrO_2)の曲げ強さに及ぼす研削加工変質層の影響について調べ、次の結果を得た。 (1)研削表面層に圧縮の残留応力をもたらす砥粒のバニシング作用は、材料除去時の破砕規模が増大するにつれて減少する。この結果、圧縮の残留応力は曲げ強さが大きい材料ほど大きく、また硬さが大きいものほど小さい。 (2)研削時の砥粒のバニシング作用は球圧子の材料への押し込み作用から類推されるので、後者の作用による塑性変形域の大きさから圧縮の残留応力の存在する深さが推定できる。 (3)X線応力測定法によって得られるセラミックスの圧縮の残留応力は、その最大値が存在する深さがX線の有効侵入深さに比べて一般に浅いために、実際の最大値より小さい値となる。 (4)研削成形品の曲げ強度の劣化の程度は、き裂進展や相変態の影響を受け、材料の破壊靱性や相変態能に依存して異なり、Si_3N_4とZrO_2とを比べると前者は後者に比べて劣化の程度は大きい。 (5)Si_3N_4の研削成形品を焼鈍することによって、曲げ強度をかなり回復することができる。このことから、焼鈍によって圧縮の残留応力がなくなる不利さを、き裂の閉口効果が補っていると考えられる。また、ZrO_2では焼鈍によってかえって、曲げ強度が低下した。 (6)有限要素法により求めた、球圧子の材料への押し込み時に発生する弾塑性応力から、材料にき裂を発生させずに塑性変形を行わせる圧子径、押し込み荷重が存在することが明らかになった。このことは、強度劣化を生じさせずに研削加工できる可能性を示している。 (7)研削時の砥粒切込み深さを統計的に求める手法を提案した。これを用いることによって、研削によるき裂進展、残留応力をより正確に評価することができるようになると考えられる。
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