研究概要 |
本研究では,液膜シールの静および動特性を改善する目的から,シールしゅう動面に従来とは異なる形状の表面粗さを設けた3つのタイプのダンパシール(ダンパシール1:シール内面の法線方向の丸穴,ダンパシール2:シール内面の法線方向に対して30°の丸穴,ダンパシール3:シール内面の法線方向に対して60°の丸穴)および焼結金属を用いた多孔質体シールを提案した。これらのシールの特性を実験的に解析し,従来の平行環状シールとの比較を行なった結果,以下の点が明らかになった。 I.ダンパシールについて (1)管摩擦係数は平行環状に比べて大きく,さらにダンパシール1,2,3の順に大きくなる。 (2)漏れ流量は平行環状シールに比べ少なく,さらにダンパシール1,2,3,の順に少なくなる。 (3)入口損失係数は平行環状シールより概ね大きい。 (4)半径方向流体力Frは平行環状シールとの差異はあまりない。一方,接線方向流体力Ftはダンパシール1では平行環状シールとほぼ同じであるが,ダンパシール2,3ではかなり減少し,負のふれまわり力(ロータの自転と反対方向に作用する力)を増加させる傾向を示している。このFtが減少する主な原因は,シール入口部分の円周溝から流入した流体が自転と反対方向の旋回流となり円周方向の平均流速を低下させたことによると考えられる。 (5)ふれまわり運動に対する不安定領域は,ダンパシール1と平行環状シールとで差異はあまりないが,ダンパシール2,3ではかなりせまくなっている。 (6)漏れ量の低減ならびに安定性の面からダンパシール2および3は平行環状シールに優れている。 II.多孔質体シール 静および動特性に関して平行環状シールと差異はあまりみられなかった。これはシール半径すきまが大きすぎたから,多孔質材料(焼結金属)特有の静圧軸受的効果が得られなかったためであると考えられる。
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