研究概要 |
血管の病理学的異変が,分岐部などの流れの急変する部位に多発することから,血管分岐部の幾何学的構造に起因する流れ構造が血管病変の発生,促進に対して重要な役割を担うことに着目した.流対力学的因子として,血液と血管壁との界面に作用する壁せん断応力分布の解明を試みた.対象とする血管部位は、腹大動脈から腎動脈や腸間膜動脈への非対称分岐部である.アクリル樹脂で制作した分岐モデルの中間分岐面に埋め込んだ直径0.5mmの白金電極を用い,酸化還元系の電解液を作動流体として,電気化学的な限界電流法により壁せん断応力分布を測定した.モデル分岐形状は,主管と支管の面積比が3:1,流動条件として,無次元振動数7以下の脈動流,および脈動流の最大,平均および最小流量に相当する定常流,分岐後の流量配分は断面積に比例した面積流量比,および面積比と無関係に等量配分を取り上げた. 1)流れの衝突する流れ分割点近傍では,壁せん断応力は上流の数倍の大きさとなり,下流へと減少する. 2)流れの分岐する支管中枢壁(二次元流れであれば流れの剥離する領域)では,壁せん断応力は大きな振幅をもって周期的に変動する.特に,支管入り口では壁せん断応力上流値の数倍という大きさになる.このことは,血管病変が多発し,かつ壁せん断応力が小さいとされているこれまでの二次元的流れ構造とは全く異なる.したがって,三次元軸対称分岐流れの解明の必然性が示された. 3)支管中枢壁の壁せん断応力の変化は,主管壁面近くの流体が主管から支管へ施回しながら流入すること,および流れ分割点に衝突後支管内での施回流によると考えられる 4)分岐後主管を通る流れは,流れ分割点に相対する壁上で剥離する.
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