研究概要 |
本研究によって,以下の成果を得た. (1)液体のマーカー表示法と有限要素法を併用した,自由表面を有する液体の運動解析のための汎用的なシミュレーション技法を構築した.有限要素法の採用により,従来のMAC法では困難であった任意形状領域での流れを解析できるようになった.それを用いて 1.ダム崩壊問題 2.液滴と静止液面の衝突現象 3.矩形あるいは楔形物体の着水現象 を解析し,なめらかな液体の動きをシミュレートすることができた.さらに,実験値と計算値の比較を行い,実用上十分な解析精度が得られることを確認した. (2)Navier-Stokes方程式と連続の方程式を解くために新しい考え方に基づくelement-by-element法を考案した.これによって,計算機メモリーの容量不足による解析への制約がなくなり,3次元問題の解析に向けて道を大きく開くことができた. (3)有限要素法による流れの支配方程式の離散化において,任意形状境界におけるfree-slip条件の導入方法を工夫した. 今後は,本方法を3次元問題解析のための手法に拡張し,さらに液体の表面張力を考慮することによって,より実際の現象に近いシミュレーションができるように解析精度の向上に努めることが課題である.また本研究を通して,自由表面流れ問題の数値解析のために提案された方法の計算能力を測るためのベンチマーク問題の必要性を痛感した.そのような問題の考案は今後に残された課題の1つである.
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