研究概要 |
圧力損失の増加を最小限に抑え熱伝達率を大巾に増加させる方法として、電場により境界層近傍のみを能動的に乱流化させることを試み,この現象の基礎的・ミクロ的観点からのメカニズムの解明を行った。まずこのEHD(電気流体力学)を用いた伝熱促進法の有効性を実証するため、微少圧力差測定法を新たに考案し低流速時の圧力損失測定を行って熱伝達率の増加割合と圧力損失の増加割合の比を調べた。印加電圧5KVという高電圧印加により、電圧を印加しない場合にくらべ熱伝達率の増加の割合の方が圧力損失増加割合より大きく,さらにRe数の小さい方がその増加割合が大きいことが明らかになった。次に、この強制対流場での流動特性を解明する ため、2次元LDVによる流れ及び印加電圧・電流につきパワ-スペクトラムの測定を行った。Reが小さい層流で電圧を印加すると流れのパワ-スペクトラムは低周波数で大巾に増加し乱れを起していることがわかった。この時電流のパワ-スペクトラムをみると、1Hz,8Hzとその高周波などが流れに影響を与えている要因であろうことがわかった。Re数が大きい時も同様に1Hz以下で流れのパワ-スペクトラムの増加がみられた。これらEHDの乱れ発生は流れに垂直な電場方向にじょう乱されていることがわかった。なお、電圧のパワ-スペクトラムも電流と同様な傾向があったが,この変動巾は印加電圧の0.3%以下と小さかった。以上の実験結果をもとに、EHD的な乱れの発生機構を考察した。乱れは流れ方向より電場方向に強く現れ、その要因は電流にあることがわかった。すなわち,電流をイオンの移動として捕え,イオンと作動流体分子の衝突によりEHDの強制対流現象が発生していると考えられることを理論的にオ-ダ-計算を行って示した。
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