研究概要 |
先ず一酸化炭素を例に,液体と気体の各状態における振動(赤外線)及び回転(遠赤外線)スペクトルを分子動力学法により計算した.分子内振動は原子間にレナ-ド・ジョンズポテンシャルを仮定し,また原子間に静電荷によるク-ロン力が働くとして計算した.計算は温度120K,密度600kg/m^3(液体),60kg/m^3,6kg/m^3(気体)の3種の場合について,分子数108個を用い,周期境界条件を置いて,時間刻み2×10^<-16>secで行ない,10^6ステップの計算結果から系の双極子モ-メントの変動を求め,それから熱放射にとって重要な吸収断面積を計算した.計算結果によると遠赤外線(回転)スペクトルには液体,気体のいずれにおいても約50カイザ-位置にピ-クをもつが,液体の方がピ-ク値が小さく,スペクトルは広い振動数範囲に分布する.また,気体についての結果は量子論から求まるものとよく一致する. 次に実用上要重な水及び水蒸気について,特にその回転スペクトル(遠赤外線スペクトル)に注目して同様の計算を行なった.水分子のモデルとしてはBNSモデルを採用した.水の場合,特に液体状態では計算時間の制限から扱える分子数に限りがあること,周期境界条件を用いたことなどにより,これらの原因による特有の指向性が現れるという問題があるが,その制約内では実験事実と定性的によく一致する結果が得られた. 上記2つの計算結果から明らかなように,分子動力学法は赤外及び遠赤外線スペクトルの計算に有効であることが判明した.
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