研究概要 |
電解質水溶液を入れたベ-クライト製の箱に針電極と平板電極を配置した導電性沿面によって,汚損がいし表面を模擬した。インパルス電圧印加のもとで,この導電性沿面を進展しつつある局部放電の発光スペクトル(N_22PB(0,2))をモノクロメ-タにより観測し,局部放電幹部分の気体温度を算定した。このとき印加電圧波形は10/800[μS],100/2500[μS]および1000/10000[μS]と変えた。その結果,印加電圧波形および局部放電中の位置にかかわらず局部放電幹部分の気体温度は約2000Kとなっていることが判った。また局部放電が俗面を進展中に印加電圧をさい断し,その後の発光スペクトルの減衰の時定数を測定したところ,印加電圧波形および局部放電幹部分での位置にかかわらずおよそ2〜4μSであった。 ここで求められた気体温度(2000K)と時定数(2〜4μS)は大気圧空気中で熱電離状態にあるア-クの気体温度(約6000K)と時定数(約200μS)に比べて十分に小さいことから,局部放電中では衝突電離が支配的であると考えられる。 さらに,フラッシオ-バ後の放電からは陰極材料である銅のスペクトルおよび窒素の原子スペクトルが観測された。しかしながら局部放電からは窒素の原子スペクトルも観測されなかった。このことから,導電性沿面を進展中の局部放電の放電形態はグロ-状となっているものと推測される。 本研究では新しく得られた上記のことは,局部放電が汚損面を進展するときのモデルを構築する際に極めて有用である。
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