研究概要 |
InGaAlPの液相成長では,Alの固相中への取り込みが困難であるといわれてきた.そこでAlの投入方法を変えて,成長層内への取り込まれ具合を実験的に求めた.投入方法としては,1)Alを単独で,2)InーAl合金の形で,3)GaAs基板上にAl蒸着して,の3つを用いた.その結果,1)2)の方法では,成長層中にはほとんどAlは取り込まれないこと,3)の方法では,ほぼ状態図から予想される傾向と一致してAlが固相中に入ることが判明した.成長に先立つ溶液の冷却によって過飽和度をつけることは,温度差法では本来必要がない.そこで,0〜12℃の溶液温度降下幅によるAlの成長層中への取り込まれかたを比較したが,違いはみられなかった.これらの事実は,In溶媒中では,Alが溶液内に均一に溶けていないことを示唆する.成長したInGAAlP層はX線マイクロアナライザによる組成分析の結果,基板全体にわたって均一というものではなく,まったくAlが含まれていない部分が見られた.この結果と一致して,PLやCL測定からもInGaAlPとInGaPの2つのスペクトルが同じ基板上で観測された.基板上に均一に成長させるための条件を見いだすことが今後の課題である. 量子井戸構造の作成に向けて,InGaP/GaAs多層薄膜の成長条件と成長層膜厚の関係を実験的に求めた.その結果,成長温度で格子整合する成長層組成のとき,平坦で結晶性の良い薄膜が得られることが,SEM,X線回折およびPL測定より明らかになった.得られた最小膜厚は,現在のところ約200Aである.しかしながら,X線サテライトピ-クは観測されていない. CLスペクトルの電子線加速電圧依存性から成長層の吸収係数や真の発光スペクトルを求める方法を検討,考察した.この方法は,多層成長膜の各層の結晶性などを非破壊で評価する有効な手段となり得る.
|