研究概要 |
本研究は,Hopfield型神経回路網モデルを用いて,種々の組合せ問題を解くための汎用シミュレータを試作しその能力を解明することが主たる研究目的である。研究成果は概ね次の通りである。 1.Hopfield型神経回路網モデルを用いて解くことができる組合せ問題の形式として,0-1変数によって記述されたいくつかの制約条件と目的関数をもつ集合計画問題を対象とする汎用シミュレータを作成した。このシミュレータは,集合計画問題を定義するために必要なデータ(0-1変数の個数,制約条件および目的関数を表現する行列など)を入力して,集合計画問題の近似解を求めるものである。 2.グラフの最大独立集合問題やナップザック問題などを集合計画問題として定式化し,上記の汎用シミュレータを用いてその能力を実験した。実験結果から,汎用シミュレータを用いた解法では,従来から提案されている個々の問題に対するヒューリスティックな解法に比較して若干劣る解しか得られないことがわかった。しかしながら,ヒューリスティックな解法は,個々の問題の特性を十分検討し工夫を凝らしたものであるため,その解法を考案するための一定程度の労力を必要とする。これに対して今回提案した汎用シミュレータによる解法は,個々の問題を集合計画問題に変換するだけでプログラムが完成するという意味において,十分実用的な価値があると思われる。 3.上記の汎用シミュレータとは別に,確率的な動きを導入した神経回路網モデルであるボルツマンマシンを用いて,LSIの自動設計システムなどで必要となるスイッチボックス配線問題を解く手法を考察し,ある程度実用的な結果が得られた。
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